Saturday, February 11, 2017

十六念息(要点3)

「十六念息」の要点は以下の通りです。(原文と解説は次のURLをご参照ください。) http://compassion5151.blogspot.jp/2015/10/blog-post_28.html
http://compassion5151.blogspot.jp/2016/04/blog-post_26.html

実習9-12: 心行と意識
(9-10): 選択的水やり
実習9-12の対象は心行(精神形成物)と意識であり、実習5-8感情の違いが分かりにくいかもしれません。実は、感情知覚(頭の中の概念の連続)51種類心行の一つなのですが、余りにもインパクトの強い心行であるため、感情知覚は外出しされているのです。従って、実習9-12心行49種類となります。次に、意識ですが、仏教では8種類意識があり、感情知覚心行根源あるとされています。8種類の意識とは、感覚意識五感)、心の意識(顕在意識)、マナス(エゴ)、貯蔵意識(阿頼耶識)です。

実習5-8感情心の意識(顕在意識)に顕現した感情に限定されますが、実習9-12心行と意識はその領域に加えて、もっと深い領域である貯蔵意識(阿頼耶識、潜在意識)に貯蔵されている心行の種子心行が顕現する前の段階も含み、その両方(心行と種子)に働きかけます。簡単に言うと、健全な種子に水やりをすると健全な心行が顕現し、不健全な種子に水やりをすると健全な心行が顕現するということです。

従って、選択的水やりとは、次の通りとなります。
1) 健全な種子に水やりをする。
2) 不健全な種子に水やりをしない。
3) 健全な心行が顕現していたらそれを維持する。
4) 健全な心行が顕現していたら、健全な心行へ変容する。
5) 意図的に、健全な種子に水やりをして健全な心行を顕現させ、健全な心行へ変容後、健全な種子として貯蔵意識へ戻す。
(注)5は難易度が高く、上級者でなければ危険ですので、初心者にはお勧めできません。

マインドフルなら、自分の内面と周囲で何が起こっているかに気付けますので、気付き次第選択的水やりをすれば、自分の心を自由自在にコントロールできます。また、自分が選択的水やりをするだけでなく、周囲の人にも選択的水やりをしてもらえるように依頼しておくことが賢明です。この選択的水やりは、八正道の「正精進正しい精進)のことです。

(11-12): 集中と解放
実習11-12は、心行を深く観て、洞察を得て根本原因を理解し、思いやりを発生させて心行を変容する実践です。深く観ることによって集中のエネルギーが発生し、その集中のエネルギーによって根本原因の洞察(理解)を得、洞察のエネルギーによって思いやりが発生し、思いやりのエネルギーによって恐れや不安といった心行が変容するのです。心行を変容することが、心の解放です。尚、実習11得る根本原因の洞察(理解)とは、四諦の第二の真理(集諦:苦しみの原因に該当します。また実習12で達成する心行の変容とは、四諦の第三の真理(滅諦:苦しみの終わりに該当します。

恐れ不安といった煩悩は、苦しみの原因です。従って、恐れ不安がある限り、あるがままの自分を無条件に受け容れることができなくなります。自己嫌悪になる場合もあります。常に考えてばかりで、心が過去に彷徨うと後悔悲しみで苦しみ未来に彷徨うと恐れ不安で苦しみます。この悪循環は、苦しみの根本原因を洞察を通して理解しない限り、断ち切ることはできません。断ち切れないと、たとえ意識的な呼吸で一時的に思考を停止できてマインドフルになれたとしても、何かの拍子に思考が復活して失念状態に戻ってしまうのです。

従って、安定的に思考を停止し、マインドフルな状態を長く継続するには、どうしても苦しみの根本原因を洞察を通して理解する必要があります。もちろん、それでも概念を絶滅できていませんので、たまには思考が復活してしまいます。それ故に、本物の実践者は毎日瞑想を欠かすことはなくティク・ナット・ハン一日24時間瞑想している由、常にマインドフルな状態を維持するための実践を怠りはしないのです。完全に一日24時間思考を停止する(マインドフルでいる)ためには、概念の絶滅によって、完全な悟りを開くしか方法はありません。

(つづく)

(参考)https://www.youtube.com/watch?v=7eSuUDzwAWs
http://www.amazon.co.jp/dp/B012YZBHHS

ティク・ナット・ハンの書